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FPがクレジットカウンセリングを行う意義

今後は金融機関が多重債務問題に主体的に関与していく必要があろう。その場合、クレジットカウンセリングの担い手としては、資格取得者が急増しているFPの起用が第一に考えられる。もちろんFPといえども万能ではなく、守備範囲が広い分、得意・不得意分野が明確に分かれやすいため、クレジットカウンセリングに関する研鑽・経験の積み重ねが不可欠であることはいうまでもない。とはいえ、FPがクレジットカウンセリングを行う意義はきわめて大きい。FPといえば、世間一般では資産運用(プライベートバンキング)中心とのイメージが強いほか、税務、相続・贈与、事業承継等に関する相談に応じるケースが圧倒的に多い。

しかし、かつて生活保護を受けていた方から、未成年の長女が交通事故にあい後遺症が残った件で相談を受けたことがある。その後、補償金が出ることになったので相談者が自宅の購入を検討した際、家と土地の名義をだれにするか、また長女の後見人をだれにすればよいかといった相談も受け、家庭裁判所への申立手続の説明も行った。このとき、「どんなお客様にもFPニーズはある」とつくづく実感したものである。FP業務の対象は決して富裕層だけではない。恵まれない境遇の方、生活が困窮している方には、不幸な状態から脱け出したいとする切実なニーズがあり、適切なアドバイスが早急に求められる。

貧困や生活困窮が重大な社会問題となっている今日の時代環境にかんがみれば、FPにもこうしたポジショニングがあってしかるべきであろう。それから、「FPはコーディネーターである」といわれる場合が多い。弁護士や公認会計士・税理士などのような業務独占資格ではなく、弁護士法・公認会計士法・税理士法などの業法に抵触しないよう、コンプライアンスに留意すべきであることも影響しているからであろう。だが、FPがコーディネーターといわれる最大の理由は、問題解決にあたって弁護士・公認会計士・税理士といった専門家に頼らざるをえない局面が多く、専門家との緊密な関係やネットワークの構築が欠かせないからにほかならない。

コーディネーターに徹すれば、弁護士などの専門家による対応が必要な面で、得意分野や人間性をも勘案して最適な専門家を紹介することができる。こうした点をわざわざ記すのは、最近「過払い金バブル」「返還金バブル」なる問題が目立つという事情がある。過払い金返還請求の強いニーズを背景に債務整理の事件処理が急増した結果、高い収益を得る弁護士・司法書士が少なからず存在する。たしかに、債務整理関連のテレビCMや電車など車内広告の多さには驚くばかりである。ところが、債務者との面談をすることなく勝手に手続を進めたり、依頼の趣旨や広告とは異なる対応をしたり、高い手数料を徴求されたりといったトラブルが続出しているという。対応すべき案件の数が事務所の処理能力を超え、手が回らなくなり事件処理が停滞するケースも少なくないようだ。

こうした動きを受け、日本弁護士連合会は2009年7月17日、「債務整理事件処理に関する指針」を理事会で決議した。配慮すべき事項として、①直接面談の原則、②依頼の趣旨の尊重、③過払い金返還請求事件を受任する際の原則、④リスクの告知、⑤報告が盛り込まれている。それだけ原則を度外視し、常識や配慮に欠けた事件処理を行う弁護士等が多く、トラブルが深刻化している実情が垣問みえる。また、日本司法書士連合会も2009年12月16日、「債務整理事件の処理に関する指針」を理事会で決定した。悪質な弁護士・司法書士を回避するためにも、幅広い人脈とネットワークを築いている金融機関のFPが、実力があり信頼に足る弁護士・司法書士を多重債務者に紹介することが期待される。

まさにコーディネーターたるFPの面目躍如であり、FPがクレジットカウンセリングを担う意義を端的に物語っているといえるのではないか。ただし、金融機関内でFP資格取得者が増加しているとはいえ、クレジットカウンセリングでは高度・専門的な知識とスキルが要求されることに加え、採算性(コスト面・リスク面)を考えればおいそれとは取り組めないことも否定できない。クレジットカウンセリングに強いFPの育成も容易ではなく、時間や労力・コストを要するに違いない。したがって、多重債務問題に取り組む弁護士・司法書士や自治体職員、消費生活アドバイザー・コンサルタント、クレカウンセラー、債権管理士の方々がFP資格を取得することも望まれよう。

最近では、純粋な多重債務者というよりも、貧困・生活困窮を理由にクレジットカウンセリングを求める方々が増えていると聞く。倒産・リストラで職を失った方やニート、ワーキングプアの存在は社会的に看過できない。その意味で、最適な職業選択を支援するキャリアカウンセラーのほか、社会福祉の観点からソーシャルワーカーの存在・活動が注目されているが、彼らもFP資格を取得したほうがよいように思われる。FP資格を取得すれば、キャリアカウンセラーやソーシャルワーカーの活動も精神論・抽象論の域にとどまることなく、より踏み込んだ具体的対応が可能になろう。クレジットカウンセリングに関する専門的・統一的資格が見当たらず、かつカウンセラー不足が指摘される状況下、金融機関職員だけではなく、多重債務や貧困の問題に取り組む方々が積極的にFP資格を取得する方策も真剣に検討されるべきではなかろうか。