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クレジットカウンセリングに必要な資格とは?

まだ終身雇用が当たり前だった時代に、わたしは数度の転職を経て東京都内の大手信用金庫に入庫した。大学では文学部で心理学を専攻しており、入庫前の仕事も金融とは縁遠かっただけに、入庫後は不安の尽きない日々が続いたが、銀行業務検定(法務3級)で庫内トップの成績を収めて以来、自覚や自信が芽生え学ぶ喜びを感じるようになった。そして1970年代後半、某都市銀行の「年金は○○銀行に!」という広告をみて年金分野の重要性を痛感するに至り、社会保険労務士の資格取得を思い立ち試験に合格したのである。その経験と成果が評価されたのか、約10年にわたり人事部研修課長を務めることになる。

意欲と情熱をもって努力すれば一定の資格が取得できることを職員にアピールすべく、資格取得にいっそう励み率先して範を示そうと決意。その姿勢は研修課長時代以降も続き、1級FP技能士、1級販売士、1級DCプランナーといった難関資格の取得に結びついた。したがって、資格に対する関心はいまでも強い。ところがクレジットカウンセリングに関していえば、専門的・統一的な資格は現時点で見当たらない。カウンセラーには「消費生活アドバイザー」「消費生活コンサルタント」の資格をもつ方が多いように見受けられるが、消費者トラブル関連の知識や相談スキルは身についても、専門的・高度な金融関連の知識が修得できるか一抹の不安は拭えない。一方、(社)日本クレジット協会では「クレカウンセラー」(クレジット債権管理士上級資格)制度を設けている。

協会のホームページによると、同制度は「業界の社会貢献の一環として、『クレジット教育』『クレジット相談』ができる担当者の育成を目的」としている。クレカウンセラーという名称もさることながら、ベースとなった「クレジット債権管理士」資格制度では「顧客の立場に立ったカウンセリング等を行う」ことも目指しているので、クレカウンセラーはクレジットカウンセリングに必須の資格と考えられなくもない。半面、円滑にトラブルなく債権管理・回収を進めるための資格という印象も強い。しかも対象者は、クレジット債権管理士の資格取得後3年を経過し更新をした者または実務経験修了者である(クレジット債権管理士の対象者は、日本クレジット協会の会員企業および団体またはこれに関連のある企業等の職員である者、同協会会員の代表者の推薦のある者)。

ともすれば業者寄りのスタンスに陥る危険性をはらんでいるほか、金融機関をはじめ世間一般に門戸が開かれた資格とは言いがたいのも事実であろう。残念ながら、消費生活アドバイザーやクレカウンセラーといった資格の取得に掻き立てられることはなく、周囲にもこうした資格を取得している金融機関職員は(信販・カード会社やサービサー会社に出向した方々等を除けば)ほとんど存在しなかった。FPとしての経験をふまえると、消費生活アドバイザーやクレカウンセラーといった資格については次のような疑問や問題が残る。

①ライフプランニングや生活設計を適切に行うことができるか。加えて、相談者自身や身内に不測の事態(事故や不幸など)が突然襲ってきて、従前のプランどおりに事が進まなくなったとき、機動的に対応することは可能か。

②クレジットカウンセリングでは、金銭管理に関する相談、対応策の構築やリスクヘッジのみならず、心理学でいう共感的理解に通じる心理・精神面のケアが必要になる。狼狽した相談者の精神状態を落ち着かせつつ、ヒアリングを通じて状況把握と問題解決策の提示を適切かつ冷静に図ることはできるか。

③消費者トラブルや債権管理・回収への対応を最優先に考えるあまり、関連法令の知識・スキルの修得に重きを置く傾向が強いのではないか。心理・精神面のケアと金融関連の知識とのバランスは確保できるか。

④消費生活アドバイザー・コンサルタントに相談する場合は各地の消費生活センターが中心となるが、拠点やアドバイザー・コンサルタントの数は十分か。

クレカウンセラーに至っては、日本クレジット協会によると2010年3月末現在で1,018名にすぎない。拠点や人員の数に関しては、多重債務相談に応じる自治体や法曹界(弁護士・司法書士)、(財)日本クレジットカウンセリング協会においても不足がちのように見受けられる。拠点や人員が少なければ、切迫した状況にある多重債務者への迅速な対応が困難になりかねない。また、クレカウンセラーの場合は業界関係者が多い一方、自治体や弁護士・司法書士の場合は敷居が高いとして、抵抗感を覚える多重債務者も少なくないと思われる。